日本株再評価へ

さて、年に数回の見直しがある株価算出大手の米MSCIの全世界株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」だが、先週にキオクシアや荏原など4銘柄を追加すると発表している。また除外は3銘柄だが、MSCIといえばちょうど昨年の今頃には当欄で「オルカン除外」と題して5月、8月、11月と大幅に除外銘柄が顕著になっている旨を書いたのを思い出す。

今回は上記の通り4銘柄追加の3銘柄除外と差し引き1増となったが、日本株組み入れが純増になるのは3年9か月ぶりの事とこれを報じた先週の日経紙にも出ていた。今回組み入れられた銘柄はやはりというか“旬”の半導体銘柄が多いが、発表後に荏原は本日も大きく上昇して上場来の高値を更新、またキオクシアも今週は年初来高値を更新しているが、同社など直近わずか3か月で株価は実に5倍近くにも化けている。

ちょうど1年前は「このまま除外が続くようであれば海外勢の日本株離れの一因にもなりかねないだけに歯止めをかけたいところ~」と書いていたが、日経平均を為替レートで割りドル建てでみた今年の相場は米S&P500を大きくアウトパフォームしているものの、バリエーションは予想PERでみれば米S&P500のそれよりまだ水準は割安と報じているのをあちこちで目にする。

そういったことも背景に海外投資家による日本株買いも先月には月間で最大の買い越しとなっているが、MSCIの日本株の組み入れ比率は“失われた30年”で約5分の1にまで減少してきている。先月に日経平均は史上初の5万円大台乗せを実現したが、同指数に連動するパッシブ運用資金も巨額で需給に与える影響も少なくないだけに今後どの程度比率が回復してくるかこの辺には注視しておきたい。


AI跛行色

本日の日経平均はソフトバンク株に翻弄されるかっこうでプラス圏とマイナス圏に大きく振らされ、引けは同社の下げ幅が縮小するのに合わせて反発して引けた。そんな中で三井海洋開発が純利益の大幅上方修正から後場にストップ高まで急騰し上場来高値を更新、同じく三井では三井金属も26年3月期に連結純利益が従来予想から上方修正するとの発表で急騰しこちらも上場来高値を更新、値上がり率ランキングで2位、3位に揃ってランクインした。

上記の三井金など銅市況の高騰にAIデータセンターのサーバー需要も相俟って関税ショックで付けた安値から本日の大引けまでその株価は実に約6倍まで大化けしているが、同じAI関連でも代表格のソフトバンクなど昨日発表した純利益は前年同期比2.9倍の2兆9240億円と同期間としては過去最高であったものの冒頭の通り株価は肩透かし?の反落となり、ひところのAIモノ総嵩上げから本日の市況を見るに跛行色が出てきた感もある。

かつてのITバブルを経た学習効果なのかどうか、何でもかんでも買い続ける姿勢からAI括りでも堅めの実需を選別する姿勢が出ているのが興味深い。いずれにしても冒頭の三井金属は本日の急騰ではれて“1兆円倶楽部”の仲間入りとなったが、近年の「AI」というテーマを背景に各大台更新でそれぞれの“大台倶楽部”も今年一年でその景色が大きく変わることになるか。


IP株も躍進

本日の日経紙投資面には「純利益 市場予想超え6割」と題し、AI(人工知能)向けなどデジタル投資の拡大や円高一服、強みの製品の販売増を背景に2025年4月~9月期の業績が全体の6割の企業で純利益が市場予想を上回った旨の記事があった。自動車大手が米関税の影響で軒並み打撃を被る中にあってトヨタ自動車はHVの販売が好調でこの強みが光り市場予想との差は1300億円以上になっていた。

同紙には上記のトヨタをはじめ最終損益を市場予想を上回った企業のランキングが出ていたが、強みといえば7位にランクインした任天堂はちょうど昨日当欄で書いたように日経トレンディの“2025ヒット商品”の3位にランクインした「Nintendo Switch 2」の好調から純利益は8割増えている。また堅めな想定為替レートも相俟って来年3月期の純利益見通しも当初予想から500億円引き上げている。

そういえばこの“2025ヒット商品”で上記の「Nintendo Switch 2」を上回り2位にランクインしたのは「国宝」であったが、「鬼滅の刃」と共に本日発表になったソニーGの純利益を大きく押し上げている。ソニーGもソフトバンクほどの派手さは無いものの先月は上場来高値を更新し時価総額ランキングでベスト5に入ってきており、1位の自動車然りお家芸のIPも加わった新たな日本の基幹産業にはまだ期待が出来るか。


ヒット商品2025

今年も残すところあと2か月というところだが、先週日経トレンディが発表したこの時期恒例の「今年のヒット商品」は昨年同誌がヒット予測として挙げていた「ジャングリア沖縄」が意外?に下の方の29位にランクイン、上のほうに目を移しベスト3を見てみると3位には「Nintendo Switch 2」、2位は「国宝」、そして1位に輝いたのが「大阪・関西万博withミャクミャク」となっていた。

1位の大阪・関西万博、当初はどこも不評であったがふたを開けてみれば2500万人が訪れ、ミャクミャクなどの関連グッズの売り上げも後押しして一転して230億円を超える黒字となり、その経済効果も軽く3兆円を超えるともいわれている。そして2位の「国宝」、歌舞伎界を舞台にしたこの興行収入は22年ぶりに100億円を超えて先月末段階で166億円を突破、実写日本映画歴代興行収入1位も見えてきている。

そして3位の「Nintendo Switch 2」、今年6月に発売されわずか4日間で世界累計販売台数350万台を突破し、9月末までに1000万台を突破、従来販売台数予想を1500万台から1900万台に引き上げた。そういったことで来年3月期純利益の見通しを当初予想から500億円引き上げた3500億円に修正しているが、同社の想定為替レートもドルもユーロも堅めなラインに置いているのでこの辺は期待が持てよう。

そして来年のヒット商品予測としては、“時短”や“苦労キャンセル”がキーワードらしく日本初の行列型スキップ型優先入店サービスの「SuiSui」や、1位に選ばれた「多言語リアルタイム翻訳」等が挙げられていたが、9位には暗号資産のステーブルコインがランクイン。米はステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立、日本でも先月から日本初となる円建てステーブルコインが発行されているが、さてこれが来年のヒット商品にランクインしてくるのか否か興味深い。


親子上場36年ぶり低水準

さて2週間ほど前の日経紙投資面では「親子上場解消第2章へ」と題し、来週から決算発表が本格化するがこの時期には“親子上場”の解消の動きもまた年間で最も活発になる時期との旨の記事があったが、先週は29日に住友商事が東証プライム上場のSCSKを完全子会社化すると発表、翌30日には住友電気工業が同じく東証プライム上場の住友理工の完全子会社化を発表している。

親子上場の現状としては先月末で168社となっているが、ピークだったリーマンショック前の2006年度からは6割減少して実に36年ぶりの低水準となっている模様だ。上記の住友系以外でも当欄で5月に取り上げた三菱食品やNTTデータG以降、先月末で上場廃止になったアヲハタはキューピーが完全子会社化し、翌月には日本製鉄が黒崎播磨の完全子会社化を発表するなど今年3月末から9月末にかけては11社減少と加速している。

上記対象銘柄はいずれも子会社化報道から急騰しているが、日経紙ではこうしたTOB期待の思惑買いには過熱感があるとして投資家の一部では持ち分法適用会社の子会社化や売却の動きを探る動きがあるという。ここでは英系ヘッジファンドのオールド・ピーク・グループが保有する椿山荘運営の藤田観光や、先月に出光興産から完全子会社化を目指すとされた富士石油が挙げられていたがこれらいずれも株価は大きくアウトパフォームしている。

他にも関西電力の持ち分法適用会社のきんでんも今年は大きく株価を切り上げているが、冒頭の住友電工は住友理工の完全子会社化と同時に子会社の住友電設の大和ハウス工業への売却を発表している。コングロマリットディスカウント解消組の株価はその削減数が多いほど株価のアウトパフォームが鮮明なこともあり、今後もこうした向きは持ち分法適用会社含めその関係が再度問われる事になるか。


保護からイノベーションに?

本日の日経紙金融経済面では「株式トークン、日本でも」と題し、デジタル資産のインフラ開発を手掛ける3メガバンクが出資したプログマが24時間1円単位で上場企業の株式を取引できるシステムを業界横断で構築し来年中の運用開始を目指す旨の記事があった。これが叶うと最大のインパクトはやはり取引時間制約の緩和だろうか。仮想通貨よろしく24時間取引で決済も同時に実行できることで資金効率も格段に上がる。

もう一つの利点として単元株扱いと違ってこちらは1円単位で売買できるデジタル証券、これまでも当欄で単元株問題を取り上げてきたがこれも選択肢が大きく広がることになる。とはいえ株式トークンとして流通させるには企業側の同意が必要となるなどの高いハードルがあり、現在一元管理を担っている所謂「保振」との共存をどうやってゆくのかこの辺もまだはっきり見えない。

ところで「株式トークン」といえば、米では以前に当欄でも取り上げたオンライン証券大手の「ロビンフッド」が先行しており欧州で既に提供が開始されている。未公開株までラインナップしいろいろ物議も醸し出しているようだが、この辺にイノベーションを優先する欧米と投資家保護が最優先の日本との差が色濃く表れているか。欧米とでは障壁の相違から課題も多いだろうが、この実現が叶えば景色も可也変わってくるだけに今後の進展を見守りたい。


値上げ一服の霜月

帝国データバンクが発表する毎月の飲食料品の値上げ状況だが、半年ぶりに飲食料品値上げのピークになった先月から今月の値上げは合計で143品目と一転して年内最小となる見通しとなっている。分野別ではチョコレート製品など含む菓子が最多となっていたが、先月まで10か月連続で前年を上回っていた品目数が今月は前年から58.4%減少し11か月ぶりに前年同月を下回ることとなった。

値上げ要因の方は原材料高が96.2%と最も多く、それに続くのが物流費の78.7%となっていたが、円安の影響が前年から低下した一方でこの物流費の方は増加している。この物流費だが、人件費とは違って政策による燃料価格の値下げなどによっては軽減の道が見えてくる。運送会社の経費で大きな割合を占めているのが燃料の軽油等だが、現政権は年内にガソリンの暫定税率を廃止、軽油に関しても来年の4月に廃止の方向となっている。

軽油高騰対策の補助金扱いがどうなるかにもよるが、この価格が下がるとなれば自ずと物流コストが抑えられてくることでひいては価格上昇圧力の緩和にもつながってくるか。とはいえこうした部分は期待できるものの、人件費など上がると下がり難い粘着質なものも同時進行しているだけにどの程度の肌感覚で落ち着きがみられるのかこの辺は未知数なだけに今後のもその辺の動向には注意しておきたい。   


AI株席巻

本日の日経平均は小幅続伸ながら連日で史上最高値を更新している。高値更新もさることながら売買代金も活況で、本日の東証プライム市場のそれは10兆300億円と市場再編前の1部時代も含めて過去最大を記録している。この辺は言わずもがなAI関連の値嵩株の寄与が大きいと思うが、それにしても今週もマーケットはAI一色と言っても過言ではないほどの一極集中相場である。

この売買代金だが本日のトップは連日で年初来高値を更新しているアドバンテスト株で8488億円、昨日の同株は比例配分でストップ高のまま引けていたがこの株の急騰がほぼ昨日の日経平均への寄与となっている。思えば昨年に日経平均が34年ぶりにバブル期の高値を更新したのもエヌビディアに刺激された半導体関連勢が約4割も寄与した部分が大きく、この構図は以降今もなお続いているということになるか。

米国でも主要指数が史上最高値を絶賛更新中だが、上記のエヌビディアは昨日のNY市場で時価総額が遂に世界初の5兆ドル超となっている。大手テックの中で負け組とも揶揄されたアップルも今週はその時価総額が4兆ドルを突破しているが、エヌビディアがこの4兆ドルに到達したのがつい7月のことで、そこからわずか3か月で1兆ドルも増加していることになるわけだ。

こうしたテック系の狂乱?相場を目にするにどうしてもかつての2000年前後の“ITバブル相場”を思い出してしまうのだが、同セクターの高めといわれるバリエーションで見てもまだITバブル期のそれにはまだ及ばず利益の裏付けも付いてくるとすればこうした短絡的視点では見誤るということか。とはいうもののこのバリエーションに何処まで付き合うかその見極めはそれぞれ分かれようか。


関税政策で二番天井?

本日の日経紙グローバル市場面には「コーヒー豆相場 収穫順調も高値」と題して、主要なコーヒー豆生産国の収穫は順調なものの、米国の関税政策によるコーヒー豆の流通にゆがみが生じていることで需給の逼迫が意識されアラビカ種を中心に再度上昇基調にある旨の記事があった。同商品のICE(米インターコンチネンタル取引所)先物相場は今年2月につけた最高値に迫る勢いとなっている。

このコーヒー豆もカカオ豆と共に近年の高騰の影響で国内でもネスレ、UCC上島珈琲、味の素AGF等の大手が度重なる値上げを敢行、これはチョコレートも同じだがコーヒーの方が肌感覚ではまだ値上げがマイルドな感じがする。もっとも収穫が順調ということであれば、関税自体の引き下げなど環境変化で収穫が戻ってきたオリーブオイル同様に相場が下落に向かう可能性もあるか。

相場下落といえば上記のカカオ豆も年初には二番天井を付けにゆくかっこうで再度の急騰を見せていたが、こちらも今年度の収穫量が前年度を上回る観測や所謂“レーショニング”もあり指標のロンドン先物相場は年初の高値からはや半値水準にまで急落している。とはいうものの世界の在庫自体は低水準であり、コーヒー豆とて所謂“コーヒーベルト”土地の半減観測も燻っていることなど再燃素地が残っているだけに今後も相場動向には注視しておきたい。


ショートスクイーズ

昨日に初の5万円大台を達成した日経平均株価だが、本日は利確の売り等が優勢となり3営業日ぶりに反落となった。そんな中で依然として気を吐いていたのがSBG株で、本日も大幅続伸して上場来の高値を更新していた。SBGといえば本日の日経紙投資面にも「SBG株、空前の大商い」と題し、空売り等もテコに全員参加型の上げ相場となっている旨の記事があった。

同社株の売買代金も1銘柄として初の1兆円超を記録していたが、本日も売買代金ランキングは2位のフジクラの3倍以上を記録して堂々のトップ。そうした大商いの過程において相当量の空売りを誘い込んでいることもあって約2年ぶりに逆日歩も発生していたが、貸借倍率もまだ低位で再度の踏み上げ素地は残る。まだ東証が無法地帯?だった頃はこうした売り長株に仕手筋が目を付け仕掛けたケースも多かったが、規制の煩い現代にあって久し振りの光景だ。

空売りをテコに仕掛けるといえば米でも最近は2021年以来の“ミーム株”ブームが再燃している模様。21年はゲームストップやAMCがその象徴銘柄であったが、今月は代替肉のビヨンド・ミート株が約1週間で14倍以上にも化けている。ミーム株はリスクオンの先行指標ともいえるが、他に当欄でも先週に金(ゴールド)もミーム化と書いたように今回はその物色の幅も広がっておりこうした過度なリスクオンに警鐘を鳴らす向きも少なくない。


日経平均5万円大台達成

先週に日経平均株価は50000円の大台まで指呼の間に迫るもあと一歩のところで息切れしあと急落の憂き目を見ていたが、週明け本日の日経平均株価ははれて史上初の50000円大台に乗せてきた。思えば昨年の2月に約34年ぶりにバブル期に付けた最高値を更新し、その翌月には史上初の40000円大台乗せを達成したが、そこから約1年7か月で1万円上昇し次なる大台を達成したことになる。

大台突破の呼び水となったのは米中協議の進展とかだが、先週末の利下げ期待の米株高、ハト派寄りの高市内閣の高水準の支持率等々、金(ゴールド)よろしく複合的に好材料ばかりが期待先行で好感されている状況ともいえる。年始の日経紙恒例の「経営者が占う2025年」の予想で今年の日経平均の最高値の平均予想は44450円、万年強気の大手証券トップでも5万円を上げた向きは皆無だったがあっさりとこの水準を超えてきた。

こうなってくるとなかなか悩ましいのがバリエーションに対する視点か。過去のチャートを並べて現在値の水準を測る向きもあろうが、 “失われた30年”が何度となく引用されてきた日本株への捉え方そのものが外国人投資家をはじめ変貌していたらこの辺は何の意味も持たない。個別よろしくマーケット全体が“バリュー”から“グロース”に変わりつつある転換点が今なのかどうかこの辺も今後見極めておく必要があるか。


ミーム化でETF異常乖離

さて今週も金の国内小売価格が史上最高値を更新したが、そんな裏で東証が純金ETFに対して受益権1口あたりの市場価格が純資産額にあたる基準価格と比べて高い状態で推移する傾向が継続していることで注意喚起を実施している。同ETFが上場来の高値を更新した先週17日の金先物生産価格をベースにした理論価格に基づく1口(約0.94グラム)あたり基準価格は20,553.99円であったが、この日のザラ場高値は25,740円まであった。

また今週に入ってからはWisdomTree貴金属バスケットについて、同日取得した外国の主たる金融商品取引所における直近の値段を円換算した値が先週設定した基準値と大幅に乖離したことで20日の基準価格を変更して成り行き注文も金下旨を告知している。これで思い出したのが昨年はじめに日本株に連動するETF「チャイナAMC野村225」に中国の投資家が殺到し取引が一時停止に追い込まれた件か。

日経平均が約34年ぶりの高値を付けるなか、資本規制に縛られ海外株式の口座もないドシャ降りの本土株急落に見舞われた投資家が利便性の高いこのETFに我先に食いつき売買停止前には純資産に対するプレミアムが10%近くに上昇していたものだ。足元では先週も書いたように田中貴金属がスモールサイズの地金販売が停止に追い込まれるなどしているが、そうした向きの資金がETFに大挙している構図はなんともこれに似てはいないか。

そんな狂乱相場も21日のNYでは金先物価格は1日としては過去最大の下落幅を記録、上記の国内ETFもこれに加え東証や運用会社側の注意喚起の影響から一転して急落の憂き目に遭っている。FXもかつて“ミセスワタナベ”なる造語が闊歩していた時期があったが、なかばミーム化した「金」もイナゴ勢含めた投機買いの影響力が無視できない水準まで増してきており昨今の金需要の構成図も彼らによって比率が塗り替わりつつある。