単一銘柄ETF急拡大

さて、先週はETFが分配金を手当てするための日本株売りが計1.7兆円規模であるとの需給イベントが警戒される場面もあったが、ETFといえば当欄でひと月ほど前に「レバレッジの油」と題し、スペースX上場に合せレバレッジ型ETFの上場申請がなされた件や、韓国でも単一銘柄のレバレッジ・インバース型ETFが解禁され投機熱が警鐘を鳴らす領域に入ってきた旨を書いていた。

この韓国と言えば株式市場全体に占める割合の70%をサムスン電子とSKハイニックスの2銘柄でけん引しているが、SKハイニックスは今月に入って米ナスダック市場に上場し公募価格比13%高で初日取引を終えている。これに合せ上記のスペースX同様に複数の資産運用会社が同社株のレバレッジ型やインバース型のETFを投入、これにより米国市場をより直接的に揺さぶり得るとの懸念も出ている。

この辺の背景として米のレバレッジ型ETF残高は今年は2000億ドルに迫る勢いで10年間で6倍に膨張しているが、JPモルガン・チェースによれば投資対象の8割がナスダック上場銘柄で半導体やテック関連で市場が1%動くと約80億ドルの売買需要が発生するという。過熱したETF商品では度々市場価格が基準価格と比較して異常乖離するなどの場面があったのは見てきた通り。

既に上記の韓国市場ではSKハイニックス株でこのパターンが起きているが、投資家に影響を及ぼす弊害も顕著になってくれば新たな規制論もまた出てこようか。今後どういった予期せぬ動きが出てくるか知る由もないが、こうした新商品の拡大は市場のリクイディティーに大きく貢献するのか、それ以上に波乱の種をもたらすのか今後も注視してゆきたい。


官製相場食色彼方此方

本日の日経紙グローバル市場面には「金利急低下「GPIF」の影」と題し、昨日の20年物国債入札が異例ともいえる好調さを示したのを背景に金利が急低下した旨の記事があった。この辺は巨額の資金を動かすGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの所謂“クジラ”の買い観測が出ているわけだが、斯様なクジラを動員してまでも金利を低下させようとしているとの観測に警戒感も募る。

そういったことで昨日こそ長期金利も低下したわけだが、一向に霧の晴れない中東情勢の緊迫化を背景にして世界中で金利は再上昇傾向にあるのは周知の通り。とりわけ日本の場合はこうしたことに加え、先に所謂“骨太の方針”原案をきっかけに財政健全化と日銀利上げ日程の“ズレ”がより一層警戒され先進国の中でもかなり早いペースで長期金利が上昇してきた経緯がある。

斯様な状況が続けば国債が売られ、円に対する見方もどんどん厳しいものになってくるわけで冒頭のような思惑も湧いてくる。しかし最近はこういった“官製相場色”の話が良く出てくる。為替介入はもとより一寸前には原油先物市場介入の奇策が取り沙汰され、今回のGPIFによる国債購入観測だ。バブルを知る世代には崩壊後の“PKO”の失敗が記憶に新しいが、昨日のバブル期を彷彿させる時価総額光景と共にこちらもまた当時を彷彿させるものだ。


時価総額万華鏡

本日の日経紙では「三菱UFJ、時価総首位」と題し昨日の株式市場で三菱UFJ・FGの時価総額が、トヨタ自動車を抜いて初めてトップになった旨の記事が一面を飾っていた。株式時価総額といえばつい先月に当欄では「22年ぶり首位交代」として、時価総額トップを誇ってきたトヨタをソフトバンクGが上回り国内企業の時価総額トップに躍り出たことを書いていたが、その翌週にはキオクシアホールディングスがトップに躍り出ている。

そしてこの度の三菱UFJフィナンシャル・グループと、なかなかの勢いで首位が目まぐるしく入れ替わっている。現在この三菱UFJフィナンシャル・グループ、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、そしてキオクシアホールディングスは仲良く?1位から4位に入っているが、しばらくは今後もこの4銘柄は場味如何でこの順位がコロコロ変わりそうな気配もある。

ところで三菱UFJのような銀行株が時価総額で首位に躍り出るのはバブル喧しい1986年の旧住友銀行以来という。いわずもがな現在の三井住友ファイナンシャルグループだが、当時住銀と時価総額上位を競っていた興銀や一勧などこうした旧名を見るにバブル期の不良債権問題からの公的資金投入を経ての再編劇を思い出すと同時に、金融株が上位であったバブル期を彷彿させる再びの光景は金融ポストの転機を物語っているか。


中銀による構造的需給

さて今年3月頃迄は4000ドル大台割れはもうないとさえ一時思われた金だが、米利上げと米ドル高長期化の思惑が強まるなか先月末にこの水準を割っている。この下げを牽引した一因にETFからの資金流出がいわれているが、なるほどWGCによれば先月26日までの1週間では世界の金ETFから裏付けとなる金の金額にして47億ドル、重量ベースでは38トンが流出したといい、1週間でこの重量の流出は22年以来、約4年ぶりの規模という。

上記の通り先のFOMCを受けた米金融政策の思惑を背景に金融大手ゴールドマン・サックスなどは今年年末の金価格の見通しを1トロイオンス4900ドルと従来予想の5400ドルから引き下げており、シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行も年末予想を従来の4800ドルから4300ドルに下方修正している。ここまでの下落局面で記録的上昇をけん引した流入の半分弱を吐き出した計算になるが、一方でこの水準で食指を伸ばす向きもある。

CFTCでは6月末のヘッジファンドなど非商業部門による金の買い越し幅は、1月下旬以来5か月ぶりの高水準に拡大、増加は2週連続で直近で最も買い越し幅が縮んでいた5月下旬から約2割増加している。中国の中央銀行もここ20か月連続の買い越しと最長記録を塗り替えているが、6月末のバランスシートでの金保有量は前月より15トンも増加しその増加幅は23年10月以来の大きさになっている。

まさに“捨てる神あれば拾う神あり”だが、投資家の裾野が広がったこともあり短期目線で手放す投資家の裏で世界の中央銀行は“脱ドル依存”の動きで金を含めた準備資産を分散する動きも顕著になってきている。冒頭のWGCの調査では今後1年で自国の金保有量を増やす予定とした中央銀行は過去最高水準に上った模様。斯様な中銀の構造的需要が今後の価格を占う上での鍵ともなってくるだけにこの辺を引き続き見てゆきたい。


ダブルスコア級再編劇

本日はヤマダ電機に買い物に行ったのだが、ついこの間家電激戦区の池袋にヨドバシの関東最大店舗が開業したのを思い出した。池袋はビックカメラやヤマダも旗艦店を構えているがこの業界ではこれに先駆け最大手のヤマダHDと、大手エディオンが経営統合する旨の報もあったがが、連結売上高約1兆7千億円を誇るヤマダにエディオンが合わされば約2兆5千億円、2位に位置するノジマでさえ1兆円にも満たないわけだからダブルスコア級となる。

ヤマダHDは既に2021年に大塚家具を傘下に収め住宅やリフォーム事業の強化をしておりPBブランドにも注力しており、エディオンもリフォーム事業を拡大し2022年にはニトリとの資本提携し共同開発を進めている。両者とも目指しているのは暮らし全体を提案するライフスタイル企業への転換だが、今回の統合が叶えば圧倒的なスケールメリットも手中に収めることになる。

家電業界といえば当欄では今から14年前の2012年にビックカメラによるコジマ買収を書いたことがあったが、その時には「業界上位同士による再編劇にステージが変わってきた」と書いていた。人口減少の社会の中で家電に限らず小売業はビジネスモデルも変わりつつあるうえ、圧倒的規模を持たなければ生き残れない時代に入っている様をひしひしと感じる今回の大型統合だ。

そういったところでは冒頭のダブルスコア級ではドラッグストア業界でも昨年のイオン傘下のウエルシアHDとツルハHDの経営統合も記憶に新しいが、他にもホームセンターやスーパーにコンビニしかり。人口減少の社会の中で小売業のビジネスモデルも変わりつつあるだけに、今回のガリバー誕生でまた他の企業や業界にも与える影響も少なくなく合従連衡の新たな波がまた来るか。


大・中小で二極化

先週に経団連は大手企業23業種248社の夏のボーナスの平均支給額を公表しているが、それによれば企業の好調な業績や毎月の賃金上昇が反映され比較可能な1981年以降で最も高くなり初の100万円の大台に乗った模様だ。これで5年連続の増加というが、中東情勢の影響などが懸念された日銀短観も市場予想を超える5期連続の改善を見せ企業収益の底堅さが改めて認識されたかっこうだ。

大企業の設備投資額は前年度比で11.5%増となり今回のボーナスと併せ斯様な数字は賃金や投資などの循環が回りはじめたことを示すものともいえるが、この大企業の方はそれとしても雇用の7割を支える中小企業の方のボーナスはどうなっているのだろう?出るだけマシとの指摘もあるなか、帝国データバンク調査では平均で50万円にも満たない数字が出ており上記の大企業平均のほぼ半分ということになる。

それでも今年の春闘での平均賃上げ率は最終集計で大企業が5.01%と昨年より0.33ポイントマイナスと伸び悩んでいる一方で、中小企業のそれは昨年の4.65%から今年は4.69%と微増ながらも健闘が見られる。日本経済が新たなステージに入るのは大企業と中小企業の二極化がどれだけ緩和されるかにかかっているといえ、大企業のような循環の流れが中小企業にも及んで初めて皆が景況感改善を実感出来るものと思われる。


増強続くアローヘッド

本日の日経紙金融経済面には「東証、注文処理能力を倍増」として、海外投資家などの流入による注文件数や売買代金の異次元とも呼ばれる急増や加えてシステムに必要なメモリーなど半導体の価格高騰による調達難を鑑み、現在1日あたり8億3千万件の処理能力を持つ注文処理システム「アローヘッド」の処理能力を約2倍の15億件に増給する旨の記事があった。

東証のシステムといえば2006年にライブドアの連日ストップ安の渦中に売買注文のキャパオーバーから東証一部二部まで及ぶ全銘柄の取引を強制的に停止する前代未聞の事態に陥ったのが記憶に新しい。そんな当時から比較するに今の処理能力でも飛躍的だが、先月は1日当たりの注文件数が月平均で2億3000万件とここ1年で約2倍にまで膨らみ、更に直近では3億件程度で推移している。

かつて場立ちが居た頃なら“笛吹き”になるような発行済み株式分が場中に回転してしまうようなケースが近年は頻発し、HFTの自動売買や大手ネット証券中心に売買手数料の無料化も進みこれに伴う注文件数も飛躍的に急増してきている。こうしたネット系もまたシステム増強などの対応を迫られようが、最近のサービスも一昔前では考えられなかったような“至れり尽くせり”の感もあり時代と共に個人のハードルも限りなく低くなったとつくづく。


ダブルパンチ値上げ

さて、互いに停戦合意違反を非難していた米とイランが攻撃停止で合意との報道が出ているが、原油や石油製品の供給不安による影響は今月も表面化している。帝国データバンクによる主要食品メーカー調査では7月値上げ予定の飲食料品は2566品目に上っている。単月の値上げ品目が2000品目を超えるのは今年の4月以来、3か月ぶりのことで、上記の中東情勢などが品目数を押し上げている。

分野別では即席麺などの「加工食品」が1084品目と最多で、4月に日清食品が、そして6月に明星食品が価格改定を実施していたが、今月は“赤いきつね”や“緑のたぬき”の東洋水産に“スーパーカップ”のエースコック、そして“カップスター”のサンヨー食品の3社が一斉に値上げする。これに続くのが「パン」の1078品目で“ロイヤルブレッド”の山崎製パン、“超熟”のPasco、“ネオバターロール”のフジパンなど大手が一斉に値上げに走る。

外食系ではバーガーキングが2月に続き半年も経たないうちにバーガーからサイドメニューに至るまで2回目の値上げを敢行し、モスバーガーも15日から値上げ、すき家も円安による牛肉価格の高騰を背景として8日から牛丼を値上げ、昨年の値下げも今回の値上げで“往って来い”で元通りになった。またドトールコーヒーショップやエクセルシオールカフェも中東情勢を受けた包材高騰を背景に主力商品を23日から値上げする。

1か月前には「~11兆円以上も投入した介入効果虚しく円安基調は変わらない~」と書いていたが、そこから一時は1か月で更に3円近くも円安が進み約40年ぶりの円安水準に。中東情勢の悪化にこの円安も輸入コストを上昇させるダブルパンチで帝国データバンクの言う年間値上げ品目数2万品目台での着地想定を睨み今後も身構える動きが継続されようか。


健康保険法改正案効果

先に「健康保険法等の一部を改正する法律案」が可決・成立しているが、これで来年の3月からOTC類似薬がこれまでより高くなる。通年で薬を使うケース等では追加負担を求める新制度の対象外とする案も先週に提示されているが、果してその数は約1100品目にのぼり厚労省のHPに出ていたそのイメージ図によれば解熱鎮痛剤、去痰剤に抗アレルギー薬などどれもすぐに商品名が出てくるくらい馴染みの薬が対象になっている。

ちょうど1年前の今頃にOTC類似薬を取り上げた時には負担が現行から10割の満額にする等の案としていたが、一先ず薬価の25%の追加料金となったようだ。とはいえ今後も来年度以降の引き上げが検討されているようで安心も出来ないが、後は診察料が個別でどの程度別途オンされてくるかによりトータルでの“お得感”?が試算されようというものか。

そんな胸算用は兎も角も、医療費はコロナ禍の2020年の約42兆円から一昨年には約48兆円にまで拡大してきており現役世代の保険料負担も増大の一途を辿っていることも鑑み、政府としては今回のこの見直しにより年間で約900億の医療費削減効果を見込みというものの、1年間の1人当たり換算でその保険料削減効果は約400円、よく節約評論家が電気代節約の為にいろいろ面倒な手間を提案する話があるがその割に年間で数千円程度の話と同じ感さえする。

そういった事でその効果と引き換えに日本医師会など経済的負担から必要な治療が出来なくなる可能性や、自己判断で診断や治療開始が遅れ重症化につながる懸念を指摘している。1年前のタイトルには「お薬受診」と書いたが、反復処方出来るリフィル処方箋など含め厚労省のHPでも掲げている「持続可能な医療保険制度」にする為に何が重要になってくるか改革は道半ばか。


路線価2026

本日は国税庁が相続税や贈与税の対象となる2026年分の路線価を発表している。全国約31万地点の標準宅地の平均は、外国人向けのホテル需要や再開発への期待感などを背景に前年比で2.9%プラスとなり、算出方法が現在のように変わった10年以降で最大の上昇率となっており5年連続の上昇となっている。

さてその上昇率トップとなったのは32.7%の長野県・白馬村でインバウンド人気などを囃しココは3年連続全国1位、それに続くのは同じく長野県の野沢温泉村、そして続く3位には北海道の富良野市がランクイン。都内で上昇率トップとなったのは浅草の雷門通りの27.5%、また標準宅地の変動率の都道府県別では東京都が前年比プラス9.4%で東京都が最大であった。

また今回は中野駅北口広場の22.4%や、高円寺駅北口商店街通りの19.8%に荻窪の19.7%上昇など中央線沿線の上昇も目に付いたが、5年前くらいの麻布十番と同水準まで上がってきている旨を大手不動産情報会社が指摘している。冒頭の通り「相続税や贈与税の対象となる」ものだが、斯様な上昇模様を見るに相続財産の割合の変化と共に相続税等の申告義務者も自ずと増加傾向になって来ようか。


糖尿病治療薬蔓延

先週末の日経紙投資面では、高値圏で乱高下している日経平均への不安からディフェンシブ銘柄のうち医薬品などに注目する旨の記事があったが、個別では肥満薬をイーライ・リリーに導出している中外製薬の名も挙がっていた。この肥満薬に絡んでは今月中旬には厚労省が糖尿病治療薬「マンジャロ」等の目的外使用を危惧し適正使用を要請する通知を全国の医療機関向けに発出している。

米国でも同じようにダイエット目的で糖尿病治療薬を使う向きが急増しているが、日経MJ紙ではこうした動きで菓子やスナック類の売り上げが減少している裏でこの薬による副作用対策商品の市場が拡大している旨の記事があった。唾液分泌低下にはガムやミント製品の売り上げが増加し、抜け毛や肌の弾力低下には薄毛対策製品が注目され、同薬品使用中の栄養不足に対してはスムージー業界に追い風が吹いているという。

米JPモルガンではこうした“GLP―1受容体作動薬”などを含むインクレチン関連薬の世界市場規模が2030年までに2000億ドル(約32兆円)に達するとの予測を出しており、日本もこれの後追いで市場が同じような軌跡を描くかどうかだが、それらと併せ薬品ポスト全体の水準動向にも注目しておきたいところ。


株主総会2026

先週は日産の定時株主総会でメインバンク出身の社外取締役の再任が否決された旨を取り上げたが、今年も多くの企業の株主総会が先週にピークを迎えている。日産のような独立性に疑問符が付くモノ以外にも業績不振モノ、不祥事モノなどにもトップ選任の反対票が相次ぐなどここ近年の持ち合い株の減少を背景として企業統治改革を迫られるパターンが今年もより一層顕著になった感がある。

2年前の株主総会の時期に、「近年では選任議案で再任とはなったものの、その賛成比率が首の皮一枚といった取締役も多くなってきた」と書いていたが、昨年は太陽HDの社長再任案が否決される異例の事態となり、今年もこの手の“薄氷組”としては中部電力社長の56.30%、リコー社長の55.69%、KADOKAWA社長の59.68%など50%台が続々と相次いでいる。

アクティビスト勢の姿勢も傾向的には何度か書いたが従前の増配要求など短期的要求から、徹底したボトムアップリサーチで企業改革やガバナンスにより踏み込んだ中長期目線で成長戦略の具体化など経営力向上を意識した提案で賛同表を集める傾向になってきており、昨年は無かった定時株主総会開催日の後倒しを求める定款変更事項議案が20件近く出たのも目に留まる。

この辺は有報の開示時期が焦点になって来ようが、ともあれそういったことでこの6月の株主総会でアクティビストなどから株主提案を受けた企業は50社超と過去最多になっている。総会屋が蔓延っていた一昔前とは隔世の感を禁じ得ないが、今後も企業の成長を高めるための戦略やガバナンスの質の向上が経営陣に求められその対話もますます踏み込んだものになって来ようか。